ブルードラゴンが消えた。
 あの時は、ああするしかなかった。ブルードラゴンもわかってくれてた。あの瞬間、オレ達は確かに繋がっていた。だから、オレがどんなに辛い思いでブルードラゴンと別れたのか……きっとわかってる。
 目に涙をいっぱい溜めていた。今思えば、最後の最期であんなみっともない姿を見せること、なかったのにな。どうせなら、最後くらいは強い姿を見せたかった。
 いつもブルードラゴンは怒ってた。オレが弱いから。
 オレがもっと強かったら、ブルードラゴンはもっともっと強かったはずなんだ。なんてたって破壊神ってくらいだからな。
「なあ、ブルードラゴン」
 夕暮れどき、オレの影が長く伸びると、オレは話しかけずにはいられなくなる。
 もしかしたら、ひょっこり青いドラゴンが出てくるんじゃないかって、思うんだ。
 こうやって、オレだけがあの時間に取り残されてる。他の光りの戦士達はそれぞれ道を進み始めてるのに。
 ロギは薔薇十字を率いて世界統一を順調に進めている。今では薔薇十字が世界で一番規模のでかい組織になってるくらいだ。
 正直な話、オレは闇の封印後すぐに動き始め、あっさり登り詰めてきたロギが憎かった。その時はなんでこんなにも憎いのだろうと思ったけど、最近わかってきた。
 ロギが、あまりにも、真っ直ぐ進めてるから。
 ロギには迷いがない。他の奴らだって、一歩一歩迷いながら進んでるのに、ロギだけは真っ直ぐ進んでる。まるで、あの時のことなどなかったかのように。
 だからオレはロギが嫌いだ。
 でも、今のオレはもっと嫌いだ。
 隣にはブーケや新しい仲間達がいるのに、遠く離れてるけど昔の仲間だっているのに、オレはいつも孤独を感じてる。
 オレ達が封印した闇よりももっと暗い闇の中、オレは独りぼっちで立っている。闇の中は寒くて凍えそうなのに、オレは動けないでいる。ほんの少しでも進めれば、暖かい場所に出られるはずなのに。
 前に進む勇気がないと知られたくなくて、オレは前に進むフリをする。
 なあ、ブルードラゴン。こんな姿のオレを見たら、お前はなんて言うんだ?
 きっと馬鹿にするよな。んで、オレを叱るよな。わかってる。前へ進むよ。わかってるんだ……。
 涙が出そうになるのをグッと堪える。
『オレは、お前の影だ』
 どこからか、ブルードラゴンの声が聞こえたような気がした。
 慌てて辺りを見回すけど、誰もいない。念のために影を見てみたけど、やっぱりいつもと同じオレの影。
 でも、さっきの言葉はきっとブルードラゴンの言葉だ。いつでもオレを見ててくれるっていう、あいつなりの優しさと厳しさ。
 大丈夫だよ。
 ブルードラゴンが見ていてくれるなら、オレは頑張れる。
 ブルードラゴンが見ているのならば、オレは立ち止まっていられない。
 大丈夫。少しずつ、足を上げて、前へ進むから。だから――
「今、だけは……っ!」
 泣かせてくれよ。


END