うしとら(七夕)SS
七夕の時、天候は大抵雨か曇りである。
「今年も曇りだな……」
うしおは残念そうに空を見上げながら呟いた。
そんなうしおの横には、暇そうにして寝転がっているとらがいる。
うしおは不意に、とらに一つ聞いてみたくなった。
「とら」
「何だよ?」
呼べば返事が返ってくる。
うしおはそんな当たり前のことに思わず喜んでしまった。今日は七夕。呼んでも返事が返ってこなくて悲しい思いをしている二人が会える日だからだろうか?
「もし、俺とお前の間にでっかい川があって、会えなくなったらどうする?」
「んなもん、飛べばいいじゃねぇか」
「飛べなかったら?」
「魚にでも変化してやらぁ」
「それもできなかったら?」
「………おめぇ何が聞きてぇんだ?」
どの案も却下され、顔をしかめているとらがうしおの顔を覗きこむ。
「…………寂しく思ってくれるか?」
うしおの一言。
とらは今目の前にいるうしおは、どこかの妖怪が変化したものかと疑ってしまった。
「…………寂しくなんかねぇよ」
「……………」
とらが返すと、うしおは悲しそうな顔をした。本人に自覚はないだろうが、今にも泣きそうであった。
そんなうしおの頭をとらは撫でてやる。
「どんなことをしても、どんな犠牲を払っても、会う。だから寂しくなんかねぇよ」