年に一度しか会えない織姫と彦星。その一日も、大抵の年は曇りか雨。二人はとても不幸な恋人だ。いや、もしかすると、二人を引き離した者はそれを見越していたのかもしれない。
 可哀想な二人が会えるだけの奇跡があるのならば、自分達の小さな願いくらい叶うかもしれない。
 そう思い、人々は願いを短冊に託す。

『クロちゃんとずっと一緒! ナナ』
『世界征服 剛』
『みんなを助けられるような科学者になりたい コタロー』
『ゴローが幸せでありますように チエコ』
『チエコが笑ってますように ゴロー』
『生徒達が元気でいますように 鈴木』
『ガンダムが実現しますように めぐみ』
『剛君の夢が叶いますように ミー』
『キッドを倒す マタタビ』
『ゆっくり昼寝をしてたい クロ』

 各々、願いを短冊に書き、剛宅前へ飾ってある笹へ飾る。
 空を見上げると、珍しく星空が見えている。

「綺麗!!」
 ナナとチエコが笑う。キラキラと輝く天の川を見ていると、案外願いは叶うのかもしれないと思う。
「今年は会えるね」
「そうだね」
 自分達だったら、一年に一度しか会えないなんて耐えられない。などと言いながら、ロマンチックな空を見上げるミーと剛。その横で鈴木はめぐみの肩を抱き寄せるか否かで悩んでいる。
「うーん。毎年晴れてたらいいのになー」
「たまにしか晴れないから価値があるんじゃないのか?」
 あまり夢のある話とはいえない会話をするコタローとゴローには女子からの鋭い睨みが送られた。
「星ぐれぇで何騒いでんだか……」
「キッド、お主もコタロー達のようになりたいのか?」
 お世辞にも、女心が分かっているとは言いがたいマタタビに指摘され、クロの機嫌は明らかに下がる。しかし、ここでガトリングを出すほど、クロは野暮ではなかった。
「……うっせー」
 結局、それだけ言って、クロも空を見上げた。


 見上げた空の上では、年に一度の再会を果たした恋人がいるのだろうか。


END