自分の手より、一回りも二回りも大きい手を見ると、うしおは思わずドキッとする。
そんな大きな手が頭を撫でてくれると嬉しい。

相手が自分と同じ想いを返してくれないとしてもそれは変わらない。

例えば、戦いの途中、つい金の獣を探してしまい、傷を負ったとしよう。
戦いの後、獣を見ても傷一つない。
所詮、自分などその程度の存在なのだと、うしおが落ち込んでいると、とらは傷をつくるなと怒鳴る。
それがうしおは嬉しい。
「気色わりぃな」
怒鳴られて笑っているうしおを見て、とらが言う。それでもうしおは笑っている。
気にかけてもらえてるとか、声を交わせるとか、そんな何気ないことが嬉しい。
女みたいだと、悩む日もあるが、どうしようもないことだと、最近では諦めている。

「だって、好きなんだ」

諦めついでに、こんな言葉をはいてみる。
すると、とらは目を真ん丸にする。それが面白い。
うしおはまた笑った。
とらはからかわれたのかと思い、声を荒くするが、うしおはどこ吹く風だ。

まだ恋は始まったばかり。