「あ、ナルトだ」
「逃げろー」

近づいただけで、同じ年の子供は逃げてしまう。ただ仲良くなりたいだけ。一緒に遊びたいだけなのに。
伸ばした手をぼんやりと見つめる。

「目隠し鬼なら、してやるよ」

そんな言葉に、ナルトは目を輝かせた。
「じゃあ、お前が鬼な」
投げ渡されたタオルで目を隠す。
彼らの口元が、意地悪気に上がっていることになど、気づきもしなかった。

「おーにさん、こちら、手のなる方へ」

リズムをつけて言われるが、手がなる音などしない。
声を頼りにしようにも、始めの一回以外、声は聞こえない。
微かな笑い声が聞こえてくるので、誰もいなくなってしまったわけではないらしい。

「お、に、さ、ん、こ、ち、らー」

一語一語を強調するような声。ナルトは何の躊躇いもなく、声の方へ足を延ばす。

「あ、な、の、そ、こーへ」

手のなる方へとは言われなかった。
ナルトが足を延ばした先に地面はなく、妙な浮遊感の後、真っ逆さまに落ちていった。
「ここ、底無しって言われてなかった?」
「別にいいんじゃね? あいつ、親なしだろ」

子供ゆえに無邪気。
無邪気ゆえに残酷。



夜、森の近くを通りかかると、子供の声が聞こえた。

「おーにさん、こちら、手のなる方へ」

瞬間、世界が暗闇とかす。
恐ろしさのあまり叫ぶと、くすくすと笑い声が聞こえる。

「おーにさん、こちら、手のなる方へ」

声を頼りに、さまようと、手の届く距離に気配を感じた。
目の前にある気配に触れれば、暗闇の恐怖から解放される。
そんな本能の声にしたがい、手を延ばす。

「偽物の鬼は、本当の鬼に食べられちゃうってばよ」

最後に見たのは、金と蒼。



「早く、会いたいな」
『まだだ。まだ足りん』
ナルトは死体となった男を穴に投げ込む。

あの日、穴に落ちたナルトは死んだ。
だが、体に宿る九尾の力により、再び目を開けた。

『貴様はもう人ではない。年をとらず、永久に一人だ』

穴の中で九尾は言った。
『だが、わしが解放されれば――』
ナルトは一人が嫌いだった。
暗い穴の底も嫌いだった。
鬼でもいい。隣にいて欲しい。
「わかったってばよ」

偽物の鬼だから死んでしまった。
本物の鬼がいたから生き返った。

「偽物をいっぱい集めればいいの?」
穴を埋めるように、死体は増え、九尾は力を増した。
「あと少しだってばよ」
もうすぐ穴が埋まる。


「目隠し鬼、しようってばよ」