機械は、動くと熱を持つ。
それはサイボーグであるクロも変わらない。
着ぐるみを着ていれば、熱はこもり、北海道の冬場でも、寒いと感じることは少ないだろう。
だというのに、いつも寒い、寒いと言ってこたつにこもり、マタタビを呆れさせている。

騙され続けているマタタビのため、ミーは機械が持つ熱と、着ぐるみによる保温性を伝えた。
サイボーグである自分達は、常に稼動している状態であり、まだ冬に入ったばかりの今ならば、寒さなど感じるはずがない。

「だろうな」

意外にも、マタタビは知っていた。

「キッドの近くはわずかに温かいからな」

国宝級の器用さを持つ猫は、温度にも敏感だったらしい。

「……知ってたんだね」

思わずミーが呟くと、マタタビは少しだけ恥ずかしそうに微笑んだ。

「甘やかしている自覚はあるのだがな」

この言葉で、ミーはクロの言う寒いが、寂しいと繋がるのだと、漠然と理解した。
理解すると同時に、笑みがこぼれる。表情というものは存在しないが。
マタタビに熱なことを教えたのは、意地悪でもなく、正義感でもなく、ただのお節介からだったのだが、思わぬところで二匹の仲を見せつけられてしまった。

「寒い、ね」

ぽつりと呟いた。
体が寒いわけではない。心が寒かった。
帰れば剛がいる。コタローもいる。そうわかっているのに、ミーは寒かった。

「じゃあ、しばし温まっていくといい」

開かれた扉の先から、温かい空気が溢れていた。