Q.幸せってなんでしょうか。


そんな質問が書かれた看板があった。
看板の下には机と紙と鉛筆。
「書いてやろーぜ」
マゼランは真っ先に紙と鉛筆を手に取った。
面倒だと思いつつも、その後に続いて鉛筆を手に取る。
しかし、いざ書こうとすると、幸せというものがわからなくなる。言い出したはずのマゼランも、紙は白紙のままだった。
生きていることで、不幸を感じることは少なく、幸せというものを感じているときのほうが遥かに多い。
なのに書くことができない。
とりあえず、適当に書いておこうとも思ったのだが、何故かそうすることができなかった。
魔法の類なのだろうが、悪意は感じられない。
白い紙に、一番最初に文字を書いたのはジェイコブだった。
「何て書いたんだよー」
「陛下っ!」
マゼランの視界に写らぬよう、紙を移動させ、インクが乾くと四つに折った。
そして、横につけられていた箱へ入れる。
「簡単なことですよ」
優しく笑う。
「生まれてよかったと、思えるときのことです」
さも当然のように言われるが、非常にこっ恥ずかしい台詞だ。
一瞬、顔を赤くする面々だったが、すぐに気をとりなおす。
迷いなく書かれた文字は、誰にも見られることなく四つ折にされ、箱に入れられる。
「満足しましたか?」
最後にマゼランが紙を入れると、ユリシーズが先を目指して歩き出す。
「あ、待てよ!」
先に進んでいくメンバーを慌てて追いかける。



『もー。何なのよぉ』
箱の周りを小さな光が飛ぶ。
『あいつら、今が一番幸せなんじゃない』
光は箱に入れられた幸せに目を通す。
《子供のような皇帝陛下に仕え、国のために何かをすること》
《戦って、勝って、馬鹿騒ぎを聞きながら酒を飲む》
《チャイルドなエンペラーと、遊ぶことデスネー》
《歌って〜♪ 歌って〜♪ 騒ぎましょ〜♪》

《気の置けない野郎共と、戦って、酒飲んで、過ごすこと、だろ》


『もう……』
皇帝とその仲間を幸せにするための魔法がある。その魔法のことをマゼランが知っていたのかは、謎だ。