『行き』
歩く。すると、足音が聞こえる。
振り返る。
「――――」
そこにはオレがいた。
青い瞳は優しげで(やっぱり、これはオレじゃないかもしれない)、眉は困っているとでも言いたげに下がっている。
「なんだよ?」
尋ねてみる。
目の前のオレが口を開く。
「本当に行くのか?」
頷く。
「考え直せってばよ」
首を横にふる。
「サクラちゃんも、サスケも、カカシ先生も、受け入れてくれるってば!!」
あぁ、オレよ。木の葉の里に住むうずまきナルトよ。
それはありえない。わかってるだろ?
オレは九尾だ。忌み子だ。
現実を見ろ。
あいつらは恐れていたよ。
九尾の力を解放したオレを見て、青ざめた顔をして。
「なら、オレも連れて行けってばよ」
瞳に陰を落として、オレがうつむく。
残念だが、それはできない相談だ。
木の葉の里のうずまきナルト。
優しい下忍のうずまきナルト。
里を信じたうずまきナルト。
置いて行くよ。
忌み子のうずまきナルト。
九尾のうずまきナルト。
里を怨んだうずまきナルト。
さぁ、行こう。
「一人は、嫌だってば……」
大丈夫だ。泣かなくていい。
すぐに皆に会えるよ。
数日後、木の葉が消えたと誰かが言っていた。