ハロウィンSS
NARUTO
年に一度、知る人ぞ知る恐怖の行事がある。
『ハロウィン』
子供たちがお菓子を求めて彷徨うその日に、毎年数人は大怪我をする。
大怪我の理由を知らぬ者は幸せだが、知る者はこの時期、お菓子を手放せなくなる。
「trick or treat!」
金髪の少年が天真爛漫な笑顔で一人の男に近づいてきた。
少年の名はナルト。この里で疎まれている子供である。
そんなナルトなので、当然男はお菓子を渡さなかった。
男は気づかなかったのだ……。隣で友人が男にお菓子を差し出していることを。そしてその友人こそ去年の被害者だったのだと……。
「お菓子……くれないの?」
悲しそうな瞳。その奥にとてつもない喜びが隠れてるなどとは、誰も気づかないだろう。
「じゃあ……悪戯だってばよ!!」
次の瞬間、男は激しい痛みに襲われる。
ギリギリのところで生かされていると実感するその痛みに倒れた男は、数週間後病院のベットの上で寝覚めるまで、悪夢にうなされ続けたという……。
trick or treat?
うしとら
ハロウィンの存在を知らない子供はいないだろう。
うしおもその存在は知っていた。ただ、その行事を行ったことがないだけ。
「trick or treat……か」
ぼんやりと、町中の子供たちが叫ぶ言葉を呟いてみる。
「町のガキ共も叫んでたが……なんだ?その…『とりっくおあとりいと』ってのは」
疑問に思ったとらがうしおに訪ねてかけてくる。
うしおは簡単な説明をして、天井を見ていた。何もする気が起きない。
「うしお」
「ん?」
呼ばれたので、とらの方を向くと、何か悪いことを考えている時の表情をしていた。
「とりっくおあとりいと」
微妙に感じの違う『trick or treat』にうしおは思わず噴出した。
ほんの少しいつもと違うハロウィン
学校の怪談
外国ではお化けの格好をして、近所を回るが、日本ではそこまでしない。
時折、子供達の『trick or treat』が聞こえてくるぐらいである。
「trick or treat」
女子中学生にこの言葉を放ったのは、お化けの格好をした子供でもなければ、同級生の友達でもなかった。
正真正銘のお化け。ただし人間の姿をしていた。
「trick or treat?」
お菓子を持っていない少女は、お菓子の代わりに同じ言葉をいい返してやった。
お化けはどう見てもお菓子など持っておらず、悪戯をしてやろうと考えていた。
だが、お化けは待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべた。
瞬間に重なる唇。
「――――っ!」
慌てて少女はお化けから離れる。
そんな様子をお化けは楽しそうに見ていた。
甘いお菓子と悪戯の両方をお化けは手に入れた