手持ち無沙汰な手にキスをして
任務完了の知らせを運んだナルトは、火影の執務室で待たされていた。
火影というのはなかなかに忙しく、ナルトがやってきたときには不在だった。
暗部の任務報告は、執務室で内密におこなわれなければならない。ゆえに、ナルトが火影を探すため外へでることはできない。
いつまでも帰ってくる兆しを見せない火影に苛立ちを覚える。
帰ってしまおうかとも思ったが、任務報告はすぐにおこなうのが鉄則。
任務で、敵の動きを待っているときとは比べものにならないくらいの時間の長さに、ナルトは手遊びを始めた。
何となく指を動かしてみたり、チャクラを使って芸の細かいことをしてみたり。
そんな時、指に逆剥けができているのに気づいた。
いつもならば、気にしないようなことだが、退屈ということもあって、つい引っ張ってしまう。
ぷちんと音を立ててちぎれる皮膚。しかし、指にはまだ浮いた皮が残っており、見栄えがよくない。
ナルトは無心に指の皮をめくり続けた。
「ナルト。指の見栄えが悪くなるだけだぞ」
そう言って、ナルトの手を止めたのは紅焔だった。
「だって退屈なんだ」
反論しつつ、指の皮剥きを続ける。
「まったく……」
呆れたようなため息と、愛おしそうな笑みで、紅焔は皮を剥かれたナルトの指に、そっと口づけをした。
突然の行為に、顔を真っ赤にするナルト。
「手持ち無沙汰なのだろ?」
ナルトを見上げ、笑みを浮かべる。
小さくナルトは頷き、手持ち無沙汰な手を紅焔の自由にさせた。