ヴァレンタインSS(ナルトで九ナル)

甘い。甘いチョコレート。
甘い。甘い匂いが鼻をつく。

一口食べれば『幸せの味』
二口食べれば『快楽の味』
三口食べれば『奈落の味』

やめることのできないチョコレート。
食べ続けるチョコレート。


「苦い」

ナルトが呟いた。
口にしているのはチョコレート。

「ビターチョコだからな」

紅焔が答えた。
口にしているのはチョコレート。

二人が口にしているのはほろ苦いビターチョコレート。
黙って食べる。

がりがり。
ばりばり。
ぼりぼり。

チョコを噛み砕く音だけが聞こえる。

「やっぱり苦い」

ナルトが言う。

「ならこれをやろう」

そう言って紅焔が差し出したのは先ほどまで自分が食べていたチョコ。
勿論ビターチョコ。

ナルトはそれを素直に受け取った。
一口。

「……」

二口。

「うまい」

三口。

「甘い」

ナルトも紅焔に自分が食べていたチョコを渡す。

一口。

「うまいな」

二口。

「とろけるようだ」

三口。

「なくなるのが惜しい」



ビターチョコレート。ほろ苦い意地っ張りの味。
チョコレート。素直と喜びの味。

あの人から貰うチョコレート。魅惑の味。