クロクロ
「もういいんじゃねーの?」
赤いクロが黒いクロに囁く。
「……」
「お前はよく耐えてる」
「…………」
赤いクロは黒いクロの腕をとり、自分の方へ引き寄せた。
「オレを出せよ」
甘い囁き。
「オレがお前の思い全てを吐き出してやる。
怒りも、悲しみも、憎しみも」
だから解放しろ。
「……いやだ」
黒いクロが口を開いた。
目は虚ろで、何を感じているかわからないが、口は確かに言葉を紡ぐ。
「オイラはまだ大丈夫だ。
大丈夫。まだ解放しない」
黒いクロの言葉を赤いクロは不満気に見る。
「……まだ、だ」
赤いクロは興ざめしたかのように、クロの腕を離した。
「わかった。『まだ』だな」
『まだ』ということは『いつか』があるということ。
赤いクロはニヤリと笑い、離れていく黒いクロを見た。