七夕
夏が来て、そろそろ七夕が近づいてきた。
女の子は、このようなお祭りが好きなものである。
七班はサクラ、十班はイノ、八班は紅先生(ヒナタ)が誘って、下忍+担当上忍の七夕祭りが開かれることになった。
「女ってめんどくせぇ…」
ため息をつきながら言うのはやはりシカマル。
「いいじゃない美味しいものも出そうだし」
チョウジはいつものようにポテチを食べながら言う。
「派手に騒ぐぜー!!」
頭に乗せた赤丸と一緒になって、キバは拳を高々と上げた。
「…七夕は静かに祝うものだ…なぜならば織姫と彦星が一年に一度会えるロマンチックな日だからだ」
呟くような声でシノが言ったが、声が小さすぎて誰にも聞き取られなかった。
「…サクラ………」
同じ班の女子の底力を見たサスケは若干引き気味である。
「サクラちゃんがいいならそれでいいてっばよ……」
もう半分以上諦めているナルトが疲れたような声を出す。
「まったくいつの時代も女は強いな…」
最近はずっとナルトと共にいる紅焔が何気に仲間に入ってきていたが、誰も気にすることはなかった。
女達は少し離れた所で何か話し合っているようで、男達の話しなんてこれっぽっちも聞き入れてくれない。
願いを書く短冊を渡された男達は各自家で書いてくることにしたらしく、女達を置いて家へ帰っていった。
夜になり、集合場所である河原に集まった男達は女達を待っていた。女の仕度は時間がかかるとはよく言ったものだ。
「おせぇな〜何してんだぁ?」
シカマルがぼやいていると、女達が現れた。いつもとは違う。確実に何かがいつもとは違う。
それは服装であった。いつものような機動性を重視したような服装ではなく、むしろ動きにくそうな服であった。しかしそれは夏らしく。そして涼しげな服。浴衣であった。
「ごめんね〜」
女達が謝っても、男達はただ無言で浴衣姿を見ていた。
見惚れたとかではなく、ただ純粋に驚いただけなのだが、女達はしてやったりな顔をしていた。
「さあさあ! 私達に見とれてないで早く飾っちゃお!」
イノが家から持ってきた笹にそれぞれ短冊をかける。
「……願い…叶うといいな…」
珍しく男達がロマンチックモードに入っていたのに、女達はシカマルに笹を渡した。
「…? 何だよ?」
「あのね〜何でもいいから自分の以外の短冊を取って?」
イノに言われしぶしぶ誰かの短冊を取る。意図はまったくつかめないが、ヘタに反論をすると面倒なことになることをよく知っていた。
ナルトと紅焔も不思議だと思いながらも誰かの短冊を取った。
「じゃあそれを音読してねv」
「はい?」
六人の男が同時に言う。
いのの言っていたことの意味がよくわからない。
音読。それは声に出して読むこと。その意味はわかった。しかし、今この場でそれをやる意味がわからない。
他人のならば、笑ってすませることもできる。しかし誰かが自分のを持っているということは自分の願いが知られるということ。男達はその場で固まることしかできない。
それとは反対に女達は嬉しそうにはしゃいでいる。あのヒナタでさえも嬉しそうだ。もともと女は秘密を打ち明けるのが好きというが、どうやら本当らしい。
ここまでテンションが上がっている女を止めれるものなど、少なくともここにはいなかった。
「じゃあ始めは私! え〜と『のんびり過ごしたい』…ってシカマル! あんたもう少しロマンチックなこと書きなさいよ!」
いきなり読み始め、文句を言い出すいのカマルはぶつぶつ文句を言ったが、結局逆らわずにいた。
のんびり過ごしたいという夢はこの時点で打ち砕かれたも同然である。
「じゃあ次は俺が……こりゃあサスケのか。え〜『一族の復興』……これもまた現実的な…」
アスマがあきれながら言うと、イノ&サクラの鉄拳が飛んできた。
「「サスケ君はいいの!!」」
すでにアスマ以外の男は笑うしかなかった。
「じゃっ…じゃあ次は俺が読む!! 『いい男が欲しい!』って、紅先生のかよ!!」
キバが言うと、紅は当然といった態度で男を見渡した。
「だって、近くの男って行ったら……ガキとおっさんだけだもの。ナルトならいいけどね〜」
「わぁ! くっ、紅先生?!」
いきなり抱きつかれたナルトが驚いて声を上げる。
「すまんがナルトを返してくれるか?」
なんとか紅焔に助けられたナルトは紅に読むように勧めた。
「も〜ナルトたっら照れ屋なんだからぁ……。あ! ナルトのだ!『火影になる!!』らしいわねぇ〜」
実際のナルトの実力を知っているシカマル、キバ、ネジの三人はその願いが嘘だと知っていた。とうに火影など超しているから……。
本当の願いは知らないけれども、自分たちの出来ることはしたいと思っていた。
「次は…俺が読むね? 『本当に大切な者を守り通す! しゃーんなろ!』アハハハ…サクラらしいね?」
カカシが優しくサクラの頭を撫でる。
次はチョウジの番だ。
「じゃあ次は僕だね『珍しい虫が見たい』シノ君……だね…」
ロマンチックも何もない願いだが、本人は本気だろうことがよく分かる。
「なら次は俺が読もう…『サスケ君をGETよ!!』……イノか…」
普通に告白の短冊だが、シノが読むとはやし立てたりという雰囲気ではなくなるのが不思議である。
なぜか暗い雰囲気を飛ばすように、サクラが短冊を読んだ。
「『お腹いっぱいの焼肉食べたい!』チョウジ…あんたこればっかじゃない…」
さすがにあきれるサクラだが、雰囲気はよくなったのでヒナタが名乗りを上げた。
「つ、次私が読む……『ナルトを守る』あっ…紅焔さんですね……」
紅焔が九尾と知らずとも、紅焔がナルトを大事にしているのは誰もが知っていた。
「んじゃ次は俺が…『シカマルに将棋で勝つ!』アスマか……俺に勝つならもっと戦略を練らなきゃだめだぜ?」
シカマルに説教をされて、軽くへこんだアスマはみんなの笑いものにされてしまった。
「ふん…次は俺だ『赤丸が元気ならいい!』キバ…本当に赤丸が好きだな…」
「とうぜんだろ!!」
サスケとキバが犬についての低レベルな言い合いをし始めたが、気にせず次を読むナルト。
「えっと『もっと明るくなりたい』ヒナタらしいてばよ!」
ナルトがヒナタに言うと、ヒナタは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
「最後は俺か…残ったのはお前だな、カカシ」
「えっ!? あっ! 待って読んだらだめ……」
カカシが止めるのも聞かず、紅焔はカカシの短冊を目で読んで……短冊を燃やした。
「貴様……の様な願いが叶えられると思っているのか?」
紅焔は怒りのあまりに少々本性が出ていた。
カカシは後ずさり、ナルトは何とか止めようと試みた……全ては無駄だったけれども―――。
カカシは逃げたが、当然紅焔は追いかけた。何処か遠くで火柱が上がった。
「笹…流そうか……」
サクラが言って、みんなが頷いた。
この年の七夕は、カカシを除いて全員が平和に終わった。
願い事が叶うかは、その本人しだいだけれども。
カカシの願い『ナルトとラブラブになれますように』
END