お手紙
 未来のオレへ

 今、お前はどうなってんのかな? オレは暗部の任務から帰ってきたところです。
 紅焔がどっかから聞いてきて、未来に手紙を書くことになりました。これを読んでるとき、こんなこと覚えてんのかな? まあいいけど。
 お前はまだ木の葉の里にいますか? ってか、生きてる? 生きてたらいいな。オレは何だかんだ言いながらも、下忍としての生活を満喫してます。
 サスケは潜在能力ありそうだし、サクラも鍛えれば伸びそう。二人とも根性があるから、カカシくらいなら追い抜けるんじゃね? って思う。
 オレは幸せです。まだ里の奴らはオレのこと嫌いみたいだけど。
 紅焔は厳しいけど優しい。紅焔と里。どっちか選ぶなら、オレは紅焔を選ぶ。未来のオレがどんな奴かわかんないから、紅焔の優しさを思い出せるようなことを書いておこうと思う。そんなことをしなくても忘れないだろうけど。
 まず、二人で任務に行ったとき、偵察とかだと絶対にフォローしてくれる。それも、さりげないから、任務が終わるまで気づけない。あと、オレが一度好きだって言ったことは絶対に忘れずに覚えていてくれる。オレが落ち込んでるときは、好きなものをたくさん用意してくれる。
 本当に感謝してもしたりない。
 紅焔以外の話もしようか。じゃあ、ちょっと暗い話でも。
 今、オレの周りの里の人間は殆ど敵だ。忍者になった今でも、石を投げられる。この間なんて、卵をぶつけられた。本当に殺してやろうかとも思う。
 じいちゃんが生きてる間は、頑張れる。紅焔と同じくらい、じいちゃんには恩があるんだ。なあ、未来のオレはちゃんと恩を返せたか?
 ん〜。他に書くことなんてあるかな? あんまり手紙とか書くの得意じゃないから、全然書けないわ。まあ、こんなところだろ。んじゃバイバイ。

 過去のオレより



「どうしたんだ?」
「いや? 面白い物を見つけてな」
「ああ、それか」
「お前が書けって言ったんだってよ」
「覚えてない」
「まあ、そうだろうな。お前って、飽き性だし」
「で、どんなことが書いてあったんだ?」
「ん〜?
 …………内緒」
「なんだ。教えてくれないのか」
「ま、そういうことだ」
「……紙と筆を取り出してどうするんだ?」
「返事を書くのさ」
「過去に?」
「そう」
「面白いことをするな」
「だろ?」



 過去のオレへ

 散々惚気てくれてありがとう。お前が紅焔のことを好きだってのはよーくわかった。
 まあ、オレも好きだから、オアイコだな。絶対にオレのほうが紅焔のこと好きだけど。
 オレは今でも里にいます。もちろん生きてる。すぐにわかることだと思うけど、じいちゃんは死にました。オレは、全然恩を返せなかったけど、お前が返してくれたらとも思います。
 ちなみに、オレが今座ってる席は火影の席です。
 下忍ナルトの夢が叶ってしまいました。サクラやサスケにはずいぶん世話になった。オレが実は暗部だって言っても、嫌われなかったから安心しろ。
 サスケやサクラは暗部として頑張ってる。
 里の奴らのことを書くなら、ある事件をきっかけに、あいつらは手のひらを返したようにオレのことを認め始めたよ。それが良かったのか、悪かったのかはわかんねぇけど、まあいいかなって。
 オレが火影になって、喜んでくれる仲間達がいるから、オレはそれでいいと思ってる。
 紅焔も、オレが火影になって喜んでくれた。
 お前は幸せだって言うけど、オレの方が絶対に幸せだ。それは断言できる。
 だからさ、早くこっちにこいよ。ここは心地がいいぜ?
 ただ、手紙を書くのが苦手ってのは変わらなかった。んじゃ、バイバイ。

 未来のオレより





「ん? これってば、何だってばよ?」
「あ、こら。勝手に見ちゃだめよ」
「だが、ナルト宛のようだな」
「え?
 ……本当ね」
「開けてみるってばよ!」
「誰からかしら?」
「読んでみればわかるだろう」



END