血の雨
ナルトはその日、どこかおかしかった。
人形の様な表情で、妖怪屋敷を出た。
「ナル坊どうしたんですか?」
妖怪屋敷に住まう地衣鬼が紅焔に尋ねた。
「分からん……ただ、ここはあの子にとっては辛いのかもしれん……」
ナルトを受け入れない人々が多い中、ナルトは影で暗部として多くの敵を殺めている。
ナルトはまだ幼い子供なのだ。
いの達と遊んでいる間は、ナルトはいつも通り仮面をかぶっていた。
「あー! いのってば何すんだってばよー」
いの達と楽しく遊んでいるナルトは、どこにでも居る普通の少年であった。
「あっ……雨…」
不意に雨が降り出した。
雨は次第に酷くなり、ナルト達はその場で解散することにした。
いの達は仲良く三人で家へかけて行く。ナルトはそれを見送ってから、人形のような顔の戻った。
酷く寂しそうな顔。
「ナルト……任務だ…大丈夫か?」
紅焔が影の『金蒼』への任務を持ってきた。
「何が? いつものことだよ、平気さ」
微笑むナルトは、やはりどこかぎこちなく、紅焔を不安にさせた。
雨の中、動きにくいにもかかわらず、ナルトは素早く敵を倒していった。紅焔は雨のせいで炎が使えなかったが、チャクラで刀を作りそれで敵を倒した。
片付いたときにはもう夕方で、雨は始めよりも強くなっていた。
「紅焔……」
敵の死体が足元に転がっている中、ナルトが紅焔を呼んだ。
すでに敵は全滅、名を呼んでも心配はない。
「何だ?」
紅焔が聞き返すと、ナルトはしばらく間をあけた。
「………俺、雨が好きだ。
自分の匂いを消してくれる。敵の血を流してくれる………」
雨のせいで確認は出来ないが、ナルトは泣いているように感じた。
「………でも、雨は嫌いだ。
誰も居ない感じがする。紅焔やいの達が居ないように感じる………」
矛盾していた。
ナルトは、紅焔がいたため人の気配には人一倍敏感である。雨ごときではそれをかき消すなど出来ない。
理屈ではない、雰囲気なのだろう。もともと静かなイメージの雨、しかも雨の日には外に出るものも少ない。
「……馬鹿…俺はお前の中に居る。離れることなど出来ない…いの達は信じてやるしかないだろ?」
静かにナルトの頭を撫でてやると、ナルトは嬉しそうに微笑んだ。今度はいつもの笑顔で……
「うん……信じる」
「そうそう、裏切ったら俺が殺してやるよ」
素直に頷いたナルトの頭を撫でながら、紅焔は冗談ぽく言った。
「ああ」
冗談でも何でも、そういう風に言ってくれたのがナルトには嬉しかった。喜んだ後に残っているのは死体のお片付け。骨も、髪の毛一本すら残らない敵は、雨と共に消えた。
END