だ〜れだ♪
「よし!素直に答えろよ?」
満面の笑みでキバ・シカマル・ネジ・紅焔を見るナルト。
そして大好きなナルトの笑みだが、恐ろしすぎて、下を向いている四人。何故か正座をさせられていた。
「まず紅焔?」
「はい……」
最強の尾獣であるはずの紅焔は見れなかった。背中から真っ黒なオーラを出しながら、金髪の男の首を掴んでるナルトのことを……。
「本っっ当に、コレがオレの親父なのか?!」
さきほどの笑顔は何処へやら、死ぬほど嫌そうな顔で紅焔に聞くナルトの瞳は、金髪の男が自分の父でないことを必死に願っていた。
「残念ながら……」
紅焔は一度男を見て答える。
ナルトとよく似た金髪藍眼は、ナルトとの血の繋がりをあらわしていたし、紅焔は生まれたばかりのナルトを抱いていたナルトの父の姿をハッキリと覚えていた。
「ほーらね? ナル君!ボクがパパだよ!!」
ただ、紅焔の記憶の中のナルトの父は四代目火影で、真面目でしっかりしてて……間違っても自分の息子を君呼びし、自分のことをパパと呼ぶような男ではなかったはずだ……。
「いや……違ったかもしれん」
「何か言ったかい?」
真っ黒な殺気が紅焔を襲う。その黒さはナルトとの血の繋がりを感じずにはいられなかったが、紅焔はナルト以外の者ならば、どのような殺気も黒さも恐れるに足らなかった。
「………はあ」
ため息を一つついた紅焔は、内心泣きそうであった。
『(このオレを封印した英雄。四代目火影がこんな親馬鹿だったとは……)』
「じゃあ、コレがオレの親父だとして、コレを呼び出したのは?」
笑顔は怖い。答えたら恐ろしい目に合う。しかし答えなければもっと恐ろしい目にあう……。四代目火影こと、ナルトの親父を呼び出したシカマルは覚悟した。
「……………オレ…です」
シカマルは冷汗をだらだら流しながら挙手をした。
「へえ……。何でかな?」
細く開かれた目から、先ほどよりも冷たい殺気がシカマルを突き刺す。
「えっと……。はい。興味本位だったんです。幽体を呼び起こし、幽霊を使って偵察が出来たらいいな〜と思って……」
「で?」
シカマルの言い訳も虚しく、ナルトはその結果がどうなったかシカマル本人に言わせようとしている。
「いや…オレは普通の人を呼び出したつもりだったんですが……何故か四代目が……」
ニコニコしながら聞いているナルトを見ないようにしながらキバが手を上げた。
「ナルト……」
「何だ?」
「オレとネジは関係ないから帰っても………やっぱりいいです」
キバの意見は却下された。
ナルトが笑顔で連帯責任と言い、シカマルと紅焔が置いていくなと殺気を飛ばしたからだ。
「ナル君。パパはね、ナル君に会いたいから呼び出されていたおっさんと代わってもらったんだよ〜」
語尾にハートをつけながらナルトに擦り寄る四代目に、紅焔がキレた。
「いい加減にしろよ……? たかが幽霊ふぜいが……!!」
紅焔の手のひらには、高熱のためか、白くなりつつある炎が浮かんでいた。
「さっきからわしのナルトにベタベタと!!」
怒りのあまり、一人称が代わってしまっている紅焔をナルトと四代目以外は呆然と見ていた。
「いいじゃーん!ナル君はボクの息子なんだし〜。大体、ナル君がたかが九尾ふぜいのものになるわけないでしょ?」
ここに、火影VS九尾の戦いが勃発した。
ナルト以外の三人は、素早くこの戦場から抜け出そうとしたが、悲しきかな……九尾と四代目、そしてナルトが里に被害が出ないように結界を張っていた。それは、中へも外へも行けないもので、里の代わりに三人が犠牲になるのは火を見るより明らかであった。
「とめるぞ……」
シカマルが青い顔で言う。
「とめれる……のか?」
キバもシカマルに負けず劣らずの青い顔で聞くが、シカマルは黙っていた。
止めれるわけがない。あの九尾と四代目火影なのだから。この世にあの二人を止められるのはたった一人、ナルトだけである。しかし、ナルトは止めようとせず、二人が何故喧嘩をしているのか見極めようとしていた。
「ナルト…あの二人は、お前のために喧嘩してるんだぞ……?」
ネジが呟くが、ナルトに聞こえるはずもない。何故ならば、すでに喧嘩と言う名の戦闘は始まっており、四方八方から爆音が聞こえているからだ。
二人をとめようとして死ぬか、このまま黙って見ていて死ぬか、ナルトにどうにか頼んでみるか……。
「一番安全なのはナルトに頼む……か」
「だけど、ナルトのとこにたどり着けると思うか?」
「無理! オレは嫌だぞ!!」
シカマルの考えはキバに却下された。
それもそのはず、今現在ナルトがいるところへたどり着くには、戦場のど真ん中を突っ切って行くしかないのだ。
ところで、三人が今どうやって会話をしているのかと言えば、紅焔と四代目の流れ弾を避けながら会話しているわけで、別に無理をしてナルトものもへ行ったり、紅焔達をとめたりしなくても余裕で大丈夫のはずなのだ。
元々、三人の強さの基準はナルトなので、自分達がかなり弱いと思ってても、実際はかなり強い。三代目の全盛時と比べてもひけをとらないほどの強さはある。
「あいつら、親父と紅焔…とめてくれねぇかな……。飽きてきたんだよな……」
戦闘が開始してから小一時間は経っていた。ナルトにとって、喧嘩の原因が何なのかとかはもうどうでもよくなり、ただ、自分がわって入ったらますますメンドクサイことになりそうだとしか考えていなかった。
「大体、あんなところで流れ弾避けるんなら、こっちにくればいいのに……」
ナルトから見て、余裕でこっち側にこれるのに必死に流れ弾を避けている三人は不思議そのものであった。
そして先ほどから、体術を使っている四代目を見て、幽体でも体術は使えるのか? と分析していた。だが結局、チャクラの流れがうんぬんとわかったため、ナルトの暇度はピークに近づいていた。
「…………あと一時間で終わらなかったら禁術をくらわせてやるか…」
何故帰らないのかといえば、このままほっておくと四代目に付きまとわれることになるし、今夜の仕事が全てナルトに降りかかってくるからであって、けっして優しさや責任感の賜物ではない。
ナルトは一時間だけ寝ることにした。
昨日も暗部の仕事で疲れているし、時間は有効に使おうという考えの表れでもあった。
もちろん、流れ弾が当たらないように結界も完璧に張っていた。そんなことをしなくても、万が一、流れ弾がナルトに向かおうものならば、全員がナルトの盾になるのだが……ナルトはその真実を知らない。
「おい……ナルト、寝てるぞ?」
ネジが視界の端に入ったナルトの様子を伝える。
「………てことは、ナルトが起きたらこの戦いは終わるな」
「ナルトの禁術で………か……」
だてにナルトと任務をこなしてきたわけではない。次にとるナルトの行動ぐらいすぐにわかった。
「ナルトが起きた時が、この戦いと、オレたちの生命が終わりだな……」
シカマルの呟きに、キバとネジは頷いた。
END