風が気持ちいい。
風はいろんなものを運んできてくれる。
美味しい食べ物の匂い。
雨や土の匂い。
そしてあいつら……。
風はたま〜に変なものを連れてくるんだ。あいつらもそのうちの一つ。
風のレジェンズ。
シロンとランシーン
でかっちょは元々俺様だし、俺に怖い思いさせるし……。うん、ろくなもんじゃねぇな!
わるっちょも始めはメッチャ怖かった。ある意味でかっちょよりも……。
でも、少しずつ慣れた……かな?
わるっちょと仲良くなったのは、最後の最期だったけど……でかっちょとは結構上手くいってたと思う。
最期に俺の名前も呼んでくれたしな!
ほら、また風が変なものを運んできた。
「シロン! ランシーン!」
呼ぼう。風が運んできたものの名を。
呼ぼう。風そのものの名前を。
あいつらは風のレジェンズ。風そのもの。帰ってきたんだ!
「おかえり!!」
「「ただいま」」
風っていいよな〜と思う。
風のレジェンズで、今現在は風のそのものになっている俺が言うのもなんだが、やっぱり風はいい。
自由気ままで、どこへでもいける。
気持ちいいとこもある。
気持ちの悪いとこもある。
気持ちいいとこといえば、ガキどもの秘密基地。あそこの風がまたいいんだ〜。
撫でるような、あやすような。
包み込まれるような、守られるような。
そこにいれば何も辛いことがないように思えてくる。
だけど…やっぱりあれだな。うん。
ああ? あれって何だって?
しかたねぇな〜教えてやるよ。
風のサーガ。シュウゾウ・マツタニ。
あいつのそばが一番いい風がふく。
綺麗で、穢れがなく、優しくて、気ままで、スッキリする。
あいつから作られる風は極上だ。あの風が止まるなら……。
俺は文明を滅ぼすことをなんとも思わなくなるだろう。
まあ、あいつから風がやむなんてありえないだろうな。
「シロン! ランシーン!」
どうやら風が俺達を運んでくれたようだ。あいつに呼ばれて返事をしないわけにはいかないよな。
「おかえり!!」
「「ただいま」」
ワル夫、お前は帰ってこなくても良かったんだぞ?
腐っても風のレジェンズですね……。
風のサーガを傷つけたとしても、私は風のレジェンズ。
風になって心地よさを感じないわけがない。
一度は宇宙へ行きましたが、あそこはいけません。
風がない。
それほど私にとって辛いことはないのです。
いいえ……。もう一つありました。
シュウゾウ・マツタニ
風のサーガである彼。私を許してくれた彼。
彼が悲しむのは辛い。
彼が生み出す風に触れれないのは辛い。
だから、私の半身が羨ましくも憎たらしい。
ずっと彼の風を浴びてたんですから。
「シロン! ランシーン!」
彼が呼んでます。私達の名を。
行かなければなりません。
「おかえり!!」
「「ただいま」」
シロン、今までずっとサーガと一緒だったんだから、少しは私に譲りなさい?
END