少年が一人、エクスに向かっていた。
エクスとは巷で有名な武器屋で、ドラゴンキラーはもちろんのこと、一般人まで御用達の武器屋なのだ。
従業員はたった六人。しかも全員がオーナーという不可思議な武器屋なのである。
本来は七人のオーナーがいるのだが、今はとある事情により六人しかいない。
そんな超有名店へ向かってる少年は一般人っぽい顔だが、一般人ではない。彼こそ「Seven エクス・ガリバー」に欠けている一人なのだ。
今までレンジャー修行のために国外へ行っていた彼たが、ようやく帰ってきたのだ。
「みんな、俺のこと忘れてないよな……?」
やや不安そうに呟く姿からはレンジャー学校期待のルーキーとはとてもじゃないが思えない。
うるさく鳴り響く心音がマーガスをさらに不安にさせる。
懐かしの武器屋の近くにくると、初めて七人が顔をあわせたときのことを思い出す。知った顔と知らない顔。始めは上手くいくのかわからなかったが、何だかんだで上手くやってきた七人だ。
外からでも店の中が賑わっているのがわかる。焦る気持ちを抑えつつ、マーガスはドアノブに手をかけ、ゆっくりとドアを開けた。
ドアの向こうには、広々とした空間があり、そこで忙しく働く従業員の姿はどれも見知った姿だった。
「よっ……よう!」
固い笑みを浮かべたマーガスを六対十二個の目が一斉に見る。
「……………………」
沈黙。
誰も何も言わない。
まさか忘れられたんじゃないだろうかと、冷や汗を流すマーガスに何かが向けられた。
「おかえり!」
同時にクラッカーが炸裂した。
六つのクラッカーで紙まみれになったマーガスにも、事態がのみこめた。
どういう経路かはわからないが、マーガスが今日帰ってくると知った六人はマーガスを驚かせてやろうと考えていたのだ。
「お前ら……驚かすなよな〜」
クラッカーに驚いたのか、みんなが覚えていてくれたことに安心したのか、マーガスはその場に座り込んでしまった。
大勢の客がいるにも関わらず、六人はマーガスを見て大笑いした。つられて客も笑いだす。
あまりにも大勢の人に笑われたマーガスは顔を赤くして急いで立ち上がった。
「も〜。あんまり笑わさないでよね〜」
マーガスより一足先に帰ってきていたイッコが立ち上がったマーガスを叩きながら言う。
「まだ店は閉まってないんだからな」
イッコと共にマーガスを叩きながらジャンが付け加える。
「マーガスも手伝ってよ〜」
落ち着いた表情でノンがマーガスの腕を引っ張る。
「ミィ、マーガスさんが帰ってきて嬉しいです〜」
似合いすぎて怖いくらいのぶりっ子ポーズを決めるミィ。
「帰ってきてすぐだけど、店の方、手伝ってくれると嬉しいな」
申し訳なさそうにドノヴァンが続く。
「足手まといにはならないでくださいよ」
生意気な口調でケンジがしめた。
この個性溢れる「おかえり」の言葉にマーガスは知らずに微笑んだ。レンジャーをしながらでもいい、辛くてもいい。この場所を失いたくない。
その思いを胸に、マーガスはエクス・カリバーに帰ってきた。
END