始めて見たとき、太陽が俺のとこに降りてきてくれたのかと思った。
毎日、毎日、太陽を見ていたから。だから、そんな俺を可哀想に思って、太陽の方からきてくれたんだって思ったんだ。でも、太陽はきてくれただけじゃなくて、俺を出してくれた。
退屈で殺されそうな、あの場所から俺を解き放ってくれた。
んで、太陽じゃなくて、三蔵なんだって教えてくれた。だから、俺の太陽は三蔵なんだ。
意地悪で、陰険で、暴力的だけど……。俺は好きだぜ? だって、本当は優しいって知ってるから。
殴るのだって愛情表現だって知ってるし、意地悪なのは嫉妬してるんだって八戒が言ってた。俺が三蔵のことを好きなのと同じように、三蔵も俺のこと好きなんだって。
悟浄が後ろの方で、ちょっと違うだろ……。って言ってたけど、たぶん八戒の方が正しい。うん。そうに決まってる。
三蔵は本当に太陽みたいにキラキラしてる。確かにキョーアクな顔をしてるときもあるけど。
「三蔵!」
「うっせー。馬鹿猿」
案外、細い三蔵の腰に抱き付くと、容赦ないハリセンが炸裂する。これも好きだから。かな?
「だーいすき!」
そう言うと、三蔵は顔を少しだけ赤くした。こういう顔をしている三蔵も好き! ってかどんな三蔵も好き! 大好きだ!
「ヒューヒュー。妬けちゃうね〜」
「悟浄。そんなこと言ってると撃たれますよ」
悟浄になんて何言われても気にしねーし。あ、三蔵は気にするっぽい。
その証拠に、悟浄の頬をギリギリかすめて銃弾が飛んでいった。
「次はその脳天に穴ァ開けるぞ」
この顔は、あんまり好きじゃないかも。
いや、大丈夫。
「俺はどんな三蔵だって好きだぞ!」
真面目に言ってるのに、悟浄は爆笑するし、八戒はいつも通り笑ってる。肝心の三蔵は硬直しちゃって、何にも言ってくんないし。なんだよもー。
「お前さぁ。そーいうの、『生殺し』ってんだぜ?」
悟浄がニヤニヤしながら言ってきた。
『生殺し』? 何で?
「お前、三蔵のことどうして好きなのよ」
質問と答えが噛みあってない気がする。まあいいけど。
「キラキラしてる髪だろ。あんがい細い腰だろ。たまに肉まん買ってくれるとこだろ。んでー」
「あ、もういいです」
まだまだあんのに、悟浄が途中でストップをかけた。だったら聴くなよな。
「でさ。お前の『好き』ってどういう類の好きなのよ」
「……『好き』は『好き』だろ?」
好きに種類なんてあんのか? 意味わかんねー。
「悟空。悟浄は、『家族愛』か『恋愛感情』か聞きたいんですよ」
八戒が教えてくれた。聞きたいことは分かった。
「…………わかんねぇ」
考えてみると、俺は三蔵のこと好きだけど、どういう好きなんだろ?
家族でも恋人でもない気がする。
俺が考えてると、悟浄が三蔵の肩をぽんぽんと叩いて、励ましてた。すぐに三蔵が銃を撃ったけど、なんか落ち込むようなことあったんかな?
「……あ」
なんか閃いた。
「太陽だから」
そうだ。三蔵は俺の太陽で、俺の光りだから。
「あー。なるほど」
「確かに家族でも恋人でもありませんねぇ」
何となくわかったけど、これをなんて言うのかわかんねぇ。
「悟空、それはね――。
『敬愛』ですよ」
敬愛……。
「尊敬まくってるってことだよ」
三蔵が何かため息ついてたけど、俺は納得できた。
俺の太陽。俺はあなたを敬愛してます。
END