グチャグチャする。
 頭の中が真っ白で何もないのに、いろんなことが混ざってる。
 何も聞こえないのに、耳元が五月蝿い。
 何か大変なことが起きてる。起きてない。
 風が吹いてる。吹いてない。
 明日は何をしよう?キザ男ん家に行こう。マックと、メグと、でかっちょと……。みんなで遊ぼう。
 母さん。ねえ、俺さ、明日キザ夫ん家に行くよ。ねえ、返事してよ。
 変な奴と戦ったんだ。メッチャクチャ恐かったけど、デカっちょ強いし、全然平気だったんだ。ねえ、笑ってよ。
 母さん。返事してよ。笑ってよ。怒ってよ。…………目……開けてよ………。
 オレ…何考えてるんだろ…。
 母さんが大変なのに。
 メグが写真撮ってる。
 マックが笑ってる。
 キザ夫があきれてる。
 んで、俺の頭の上にネズっちょが乗っかってる。
 楽しい。楽しかった。
 頭の中が真っ白になるなんて、嘘だ。
 だって、こんなにも頭の中がグチャグチャしてる。
 楽しかった。怖かった。嬉しかった。
 ………………なんで、こんなことになったんだろ?
 母さん。俺さ…。今、嬉しくない。楽しくない。悔しくない。悲しくもないんだ………。




 五月蝿い。ふざけるな。
 俺は、ガキどもを戦いから遠ざけることも出来ない。守ることもできないのか……?
 何故、俺はここにいるんだ?ここにいる必要なんてないじゃねぇか。
 何で戦うんだ? お前らが喧嘩を売ってこなきゃ、俺は何もしねぇ。
 何んでガキが襲われなきゃなんねぇんだ?俺がいるからか?
 何であいつがサーガなんだよ。馬鹿で、チビで泣き虫なあいつが……。
 何であいつの母親があんな目にあうんだ……。
 あいつが泣いてる……?
 あいつの泣き方はあんなんじゃねぇ。
 もっと大声で喚いて、暴れて。五月蝿いぐらいなんだ。
 あんなに静かに、黙って泣くような奴じゃねぇんだ。
 ふざけるな。
 何がレジェンズウォーだ。
 んなもん、どうだっていいんだ。
 文明を滅ぼす気なんてない。
 俺にゃあ関係ねぇ。
 馬鹿やっててもいい。
 風のサーガをからかうのもいい。
 なんなら、ガリオンに怒られたっていいんだ。
 ただ、風のサーガと普通に暮らしてたかった。
 なのに……どうして……お前らは邪魔をする?!
 文明がどうのこうのなんて興味はねぇ。だが……。
 あいつを、あんな風に泣かす世界なんざあ…。
 壊れてしまえばいい




 この風はレジェンズウォーの開戦を意味する。
 早い。早すぎる。
 何故ウィンドラゴンはこの風を吹かせたのだ? レジェンズウォーを起こすつもりはないと言っていたのに……。
 どうして、この風が吹く直前、全ての風が止まったのだ?
 風のサーガに何かあったのか……?
 あの二人ならば、レジェンズウォーは始まらないのではないかと思っていた。
 文明を破壊しようなどとは、考えたこともないだろうあの二人ならば……。
 私は今の生活を、悪くないと思っていた。
 自然を壊す人間を許すことなどできないが、マックといるうちに少しずつ私の中で何かが変わっていた。
 今のままで良かった。
 笑って
 怒って
 また笑う
 それだけで良かったではないか。
 何があったのだ……ウィンドラゴン。
 何故なのだ?何故この風は、こんなにも悲しさと、憎しみで染まっているのだ?
 私達を襲うレジェンズがいなければ、戦いは始まらなかったのか?
 こんなにも悲しい風が吹くことはなかったのか?
 あの優しい風が止まることはなかったのか?
 誰か教えてくれ……。


END