ここはオーキド研究場。
「サトシから離れてよ!」
金髪金目。髪の先が黒いの少年が苛立たしげに叫ぶ。彼がピカチュウであると言って、信じる者が何人いるだろうか。
「貴様……!」
 深緑の長い髪を持ち、それを一本にまとめた青年が二人を睨みつける。彼はジュカイン。
「てめぇら殺すぞ…」
 緋色の長い髪と蒼い目の青年は、いい加減五月蝿くなったのか今まで出一番殺気を出す。そんな彼はリザードン。
 この三匹以外にも人間になってしまったサトシのポケモン達はサトシを囲み、取り合いをしている。
 正直な話、サトシにとって今の状況は喜ばしいものではない。むしろその逆なのだが、誰もそれに気がつかなかった。
 何故このようなことになってしまったのかと言えば、博士がポケモンが人間の言葉を喋れる薬を作ろうと奮闘していたところに、運悪くサトシが帰ったきた。ただそれだけのことが原因だった。
 しかも偶然にもマサラタウン周辺に昔の仲間も多く集まっていた為、多くの仲間がサトシの周りにやってきていた。これも今の状況を作り上げるのに一役買っていた。
 サトシを取り合っているポケモン達。それに気づかないサトシ。そんなほのぼのとした風景が小さな爆発によって一変した。
「ごっほ……みんな大丈夫か…?」
 本当に小さな爆発で誰も怪我をしなかたったが爆発の時にでた煙が多く、研究所内にいたサトシとポケモン達はその煙をもろに吸ってしまった。
 そして煙が晴れた時には、人間の姿になったポケモン達がいた。
「な……んで?」
 思わず呟いたのは誰だったのかは分からなかった。何故ならば次の瞬間ポケモン達が歓喜の雄たけびを上げたからである。
「人間になってる〜!!」
「すげぇ!!」
「サ〜ト〜シ〜!!」
 それぞれ同じようなことを叫び終えた後は全員でサトシに飛びついてきた。
「うわぁぁ!!」
 人間の姿になったポケモン達の中には体格のいい者も混ざっている。そんな奴らに飛びつかれ、まだ十歳のサトシはつぶされてしまった。
 サトシがつぶれたので慌てて離れたポケモン達だが、それでも治まりきらずに冒頭にいたる。
「博士……どういうこと?」
 騒ぎを聞きつけてやってきたオーキドにサトシが尋ねるとオーキドは申し訳なさそうに言った。
「おかしいの……。人の言葉を話す薬を作っとったんじゃが…」
「確かに喋ってるよね…」
 マサトがぼっそと呟くがポケモン達の声に阻まれて誰かに聞こえることはなかった。
「喧嘩はやめろよ〜ちゃんと皆の話し聞いてるだろ?!」
 少々喧嘩の意味をわっていないサトシが抗議する。
「サトシって鈍いかも……」
 今更だかハルカ言うと、ポケモン達が一斉にハルカに向かって怒鳴るように
「そんなのとっくに知ってる!!」
 と、怒鳴った。それはもはや悲鳴に近いものであり、ポケモン達の焦り具合がよくわかる。ハルカ達はそんな必死さに軽く頬を引きつらせていた。
「何が鈍いんだよ?」
 そしてやっぱり分かっていない人一名いる。
 こうなってしまってはため息をつくしかないポケモン達だが、サトシに言われるがまま皆で仲良くするのだ。サトシに嫌われないためにも。


END