団長も、ガウェインも死んだ。オレとリドリー以外の人間はみんな死んだんだ。
オレは確かにリドリーを守りきった。でも、これが本当に正しかったのかどうかは今もわからない。そもそも、金龍の器になったリドリーはともかく、何でオレがまだ生きてるんだ。
実質、この世界にいる人間はオレ一人なのかもしれない。
一度全てが滅びた世界に、新たな妖精達が生まれてきた。人間と呼べるような種族はまだ生まれていない。新しく生まれてきた妖精達はオレのことを明らかに嫌っている。
オレはそれが嫌だったけど、そのおかげでオレは自分が人間なのだと確認できる。
「……オレ、これでよかったんだよな?」
何度も自分自身に問いかける。
リドリーを守ったことは間違いじゃなかったと思ってる。でも、そのためにギルドのみんなを滅ぼしてしまった。オレは、そんなものを望んだわけじゃなかった。
「ジャック。すまなかった」
悩んでいるオレの横にリドリーが座った。
金龍はオレの命が終わるまで、意識を乗っ取らないと約束してくれたから、今もリドリーはリドリーのままだ。
「別に……」
このやり取りは何十回も繰りかえされたことだ。
恨んでるわけでも後悔してるわけでもない。ただ、他の方法があったんじゃないかって思わずにはいられない。
「……ジャック。やはりお前は戻れ」
「え?」
何を言ってるんだ?
「私……いや、金龍の力をもってすれば、お前を過去へ戻すことができる」
リドリー。一体どうしちまったんだ? オレはよほどおかしな顔をしていたのだろう。リドリーはもう一度わかりやすく言った。
「お前を騎士団になる前日まで戻す。そして、お前は別の道を行け」
そんなことができるのか?
オレは、またみんなと笑いあうことができるのか?
「でも……お前はどうするんだよ!」
リドリーは首を横にふった。
「私はこの世界に残る。そうしなければいけない。
……過去の私にあったらよろしく言っておいてくれ」
それならオレはいけない。リドリーを一人残しておくことなんてできるわけがない。
「ジャック。私はもう耐えられない」
泣きそうな顔をしてリドリーは言う。
「お前がただ一人、妖精達に疎まれながら生きていくのを見るのは辛い。
あの日、私がお前の家に行かなければ……。どうしてもそう考えてしまう」
ああ。リドリー。
お前を悲しませてるのはオレなのか。オレがいるから、いつまでもリドリーは過去に囚われ、傷つけられてるのか? もしそうなら、オレは過去へ行くよ。喜んで行くさ。
そうだ。次は妖精と人間が共存できるようにしよう。
クロスを止めるんだ。銀龍を止めるんだ。大丈夫、上手くやれる。そしたら、またギルドでみんなと依頼をこなしながら生きて行こう。
「すまない」
「いいよ。オレの方こそ、ごめんな」
さようならリドリー。
END