『92、お別れ』の続きっぽいです。

 ついにこの時がやってきたと思うと、オレは踊り出したいくらい嬉しい。
 オレが一番に望んだこと。人間と妖精の共存がようやく果たされたんだ。
 本当に長かった。騎士団に入る前に戻されたオレは、リドリーをブラットオークから守りぬき、騎士団を脱退した。いつの間にかオレの居場所はテアトルになってた。
 テアトルでは一気に隊長に任命された。ジャーバスの部下から始められなかったのはちょっと残念かもしれないとか思った。まあ、そんなこんなで、無事に隊長になったオレは仲間を集めた。
 人間も妖精も区別なく仲良くなった。ヴォイドの仲間にはクロスのしたことを突き止めてもらい、そのことをリドリーに報告し、上に通告してもらった。これでクロスが地の谷への侵略を進言することはできなくなった。
 んで、オレはガウェインに会いに行った。ライトエルフに会うためにはガウェインの協力が必要だったんだ。
 ガウェインはオレが妖精と人間の共存を望んでいると言ったら、無理だと返したけど、何度も頼みこんだら根負けしてくれた。オレはライトエルフに会って人間との友好関係を結んで欲しいと説明した。まあ、予想通り却下されたけど。それでも、ノゲイラさんが生きていたおかげで、ザインとの交渉も何とか上手くいった。
 嬉しい予想外は、パーセクのおっちゃんはオレが未来からきた人間だってわかってくれたってこと。何でも匂いが違うらしい。そのおかげで、オレは今までよりも妖精と交渉がしやすくなった。
 地の谷が枯渇しそうになってるのも地龍に頼んでみた。できるかわからないけど、やってみるとは言ってくれた。
 そんなオレの努力のかいあってか、先日、人間と妖精の共存を印した条約が交わされた。
 これは内緒の話だけど、オレは泣いたんだ。
 本当に、それくらい嬉しかった。
 リドリーを守りたかった。それだけなのにオレは世界を滅ぼさなくちゃいけなかった。辛かったし、こんなのは違うと思った。昔、あるガンダースを生み出したって言われてる妖精王だってこんな世界を望んでたんだと思う。
 共存が果たされ、チームアハトにはライトエルフも増えた。
 一緒に任務をやったりして、それなりに暮らしてる。ヴォイドのヤツラとライトエルフ達はよく喧嘩するけど、どこか楽しそうだ。
 みんなはオレがいる間は共存は続くって言うけど、別にオレがいなくても大丈夫だと思う。だって、今みんなは笑ってる。そりゃ喧嘩もするけど、一緒に騒いだり、泣いたりしてるんだ。
 オレがやったことは実はすごく単純なことなんだ。
 ただ仲介しただけ。
 それだけさ。元々、人間側は妖精と歩み寄りたいって考えてたんだし、妖精側も人間と一緒にいてもいいと考え始めるのに丁度いい時期だった。
 一つきっかけがあれば、こうやって共存できてたんだ。
「ジャックー?」
「早くこいよ」
「黄昏てんなよ!」
 と言うわけで、オレは今日も元気に任務に行ってきます!
 天気は快晴。気分は良好。妖精と人間の仲も絶好調! やり直した人生だけど、残りの時間を精一杯生きていきます。


END