『死に誘われる』

 別に、驚くことはなかった。
 いつかくることだって、理解してた。わしは人間で、それもかなりの歳だったから。
 死は怖くない。もうコタロー君は立派な科学者になったし、わしの役目は終わった。もしもわしが死んでしまってもミー君やクロのメンテは彼に任せることができる。
 心残りと言えば、もう少しミー君と世界征服をしていたかったな。成功するわけないけど、ああしてるのが一番楽しくて、わしらしかった気がする。
 ミー君は泣いてくれるかな? 多分泣いてくれる。買い物から帰ってきて、わしの死体を見て、泣いてくれる。すぐにコタロー君が来て、もう手遅れだと告げる。
 葬式ここでこっそり行われるのかな? もしかしたらマタタビ君が葬式用の建物を建ててくれるかもしれないな。ロミオとジュリエットは……よくわからんが「悲しいことですね」とか言ってるかもしれない。
 ナナちゃんはきっとミー君よりもたくさん泣いてくれる。そんなナナちゃん横でクロは、クロは……黙ってる気がするなぁ。
 馬鹿にするわけでも、悲しむわけでも、怒るわけでもなく、ただ黙ってわしの葬式を見てる気がする。
 クロが泣いてくれるわけがない。うん。それでいい。わしらはそういう関係だった。
 ぐるぐると昔のことが頭を回る。
 天道。鉄人。ミー君。ミー君のお母さん。ニャンニャンアミー。クロ。コタロー君……他にもたくさんの出会いがあった。さよならくらい言いたかった。さよならと、たくさんのありがとうを言いたかった。
「剛くん?!」
 あれ……? 今日は早いんだねミー君。ああ、予想がはずれちゃったな……。こんなに自分がしぶといなんて。そうだ。せっかくなんだから、ミー君には言おう。
「あ、り……がと……う……」
 わしの声が、ミー君に、届いて、ます、よう、に……。


ミー