『死を恐れない強さ』
あたい達だっていつかは死ぬって知ったのはクロちゃんがサイボーグ風邪になったときだった。
死があんなにも悲しいと知ったのは剛博士が死んだときだった。
剛博士が死んで、すぐにミー君が死んじゃった。壊したのはクロちゃん。あたいはなんでそんなことしたの?! ってクロちゃんを責めたけど、今ならクロちゃんがあんなことした理由がわかる。
マタタビ君が死んで、クロちゃんと二人で暮らすようになってわかったの。ミー君は死ぬことを望んでたんだって。クロちゃんはそんなこと言ってくれないけど、あたいにはわかる。だってクロちゃんよくうなされてるもん。
あともう一つわかったことがあるの。それはね。多分クロちゃんもミー君と同じ思いなんだってこと。
お爺さん達も剛博士も、マタタビ君まで死んじゃって、クロちゃんは一人になっちゃったんだもの。もちろんあたいやコタローもいるけど、ちょっと立場が違うのよね。
何となくだけどわかるの。女の勘ってやつね! でも、クロちゃんを死なせてなんてあげない。あたいも悲しいのは嫌だもん。
「ク〜ロちゃん!」
ほら、あたいはここにいるよ? だから悲しまないで。心を空っぽにしないで。
「んだよ? マフラーならもういらねーぞ」
いつも通りのクロちゃん。偽りのクロちゃん。
ごめんね。縛りつけちゃって。でもあたい、クロちゃんのことが好きなの。あたいを見て。剛博士でも、ミー君でも、マタタビ君でもなく、あたいを見て。
あたいが死ぬその瞬間まで。
「あのね。あたいもうすぐ死ぬの」
あたいの言葉にクロちゃんはめんめをま〜るくした。
「……はぁ?」
ごめんね。あたいまで先に死んで。あたいまでクロちゃんを置いていくことになって。
「もうね、直らないんだって」
コタローに見てもらったの。でも、もう耐えられないんだって。あたいの体。
クロちゃんは黙ってあたいを見てる。表面上じゃわからないよ? あたいは生身じゃないもの。
「……本当か?」
「うん」
ごめんね。嘘じゃないの。
「嘘だろ?」
ごめんね。あたい、死ぬのは怖くないの。これっぽっちも。
黙って首を横に振る。それだけのことなのに、体がバチバチとスパークする。
「動くな!」
クロちゃんが慌ててあたいを動かないように止める。無駄だよ。じっとしててもあたいの体は壊れていく。
「クロちゃん。あたい、怖くないよ」
だって、クロちゃんは悲しんでくれるでしょ? あたいのことを忘れないでしょ? あたいのこと、思い出してくれるでしょ?
体が壊れる。中から壊れていく。意識が、遠ざかっていく。
「ナナ! ナナ! ナナーっ!」
クロちゃん。あたいを見ててくれてる? あたいが死ぬ瞬間を……ちゃんと見ててね?
クロ