班決め  ナルトはだるそうにしつつも目を覚ました。
 昨日、火影の孫である木の葉丸とエリート野郎をからかえたのはいいストレス発散となったが、暗部の仕事があるので眠いものは眠い。
「ナルト、大丈夫か?」
 紅焔が心配そうにナルトに尋ねると、ナルトは大丈夫とニッコリ笑った。
 そしていつも『うずまき ナルト』がつけているゴーグルでなく、イルカからもらった額宛をつけて説明会へ向かった。
「ナルト! どけ! 私はあんたの向こう側に座りたいのよ!」
 桜色の髪の女の子が大きな声でナルトに言った。
 ぼんやりとしていたナルトは一瞬誰かと思ったが、よく見ると、『表』の自分が好きな女の子であった。まさかと思いって横を見ると、こちらを睨んできたサスケと目が合った。
「なんだよ!」
「てめーこそなんだよ!」
 一瞬で『ドベ』の仮面をかぶったナルトは、サスケに言い返すが、すぐに先ほどの女の子――サクラに後ろからつぶされてしまった。
 下忍にもなっていないサクラにナルトが本気でつぶされるわけがない。すぐさま立ち上がりサスケの目の前に陣取った。
 じっとサスケの顔を見る。
 黒い髪に黒い目。確かに容姿端麗だが、いささか性格に問題がありそうな顔をしている。こんな奴のどこがいいのだろうかと、ナルトが本気で考え始めたとき、後ろから衝撃が加わった。
 偶然の衝撃はナルトにとって思いがけないもので、ナルトは衝撃を受けたままサスケのほうへと倒れ掛かる。
 サスケの唇があと数センチ――。
「「「させるかぁぁ!!」」」
 同時に三つの声がした。
 そのうち一つはナルトを心配して子供に変化して紛れ込んでいた紅焔。他の二つ声はシカマル、キバであった。
 三人はそれぞれナルトと離れていたのにも関わらず、瞬時にナルトのそばまで移動した。
 シカマルとキバすぐさまはナルトの腕を掴み引っ張っり、紅焔はサスケの顔面を蹴り上げた。
「「「大丈夫かナルト?!」」」
 手加減を少々していたとはいえ、紅焔に顔面を蹴られたサスケは後ろへ倒れて気絶していた。そしてその場にいた全員、サクラでさえもサスケに駆け寄らずただ呆然としていた。
「大丈夫だってばよ……」
 正直かなりやばかったと、ナルトは冷汗をかいていた。
 紅焔達がナルトが無事だったことに安心している間に、サクラが我を取り戻した。
「さっ……サスケ君?!」
 サクラがサスケに駆け寄ると、他の者も我を取り戻してサスケに駆け寄った。
 女子の一人がハンカチを水にぬらしてサスケの顔に置いた。それに気がついた女子達は自分のハンカチを置こうと喧嘩をし始めた。
「おい……何があったんだ?」
 その場に現れたイルカは何が起こったのか全くわからず、ナルトの方を見た。イルカと視線が合ったナルトは何も言わず、ただ肩をすくめた。
「サスケ君の看病は私が!」
「あんたなんかに任せられないわ!」
 女子が喧嘩をしているところに声が割り込んできた。
「おい……俺はもう平気だぞ」
 無事に目を覚ましたらしいサスケが声をかけると、女子達がサスケにいたわりの言葉を投げかけていった。
「お〜い静かにしろよ」
 イルカが声をかけると、騒がしかった女子達も渋々落ち着いて席に座った。
 全員が座ったのを確認したイルカは、改めて全員に声をかけた。
「まぁ、何があったかは知らないが説明を始めるぞ」
 少々苦笑いしながらも三人一組スリーマンセルについて説明し始めた。
 下忍としては基本のことを聞かされていたナルトは本気でサスケが嫌いなため、同じ班になる予感がしつつも一緒にならないことを祈らずにはいられなかった。
 一方シカマルの方はすでに旧猪鹿蝶と同じメンバーになるのは目に見えていたので、特に気にすることもなく眠り始めた。
 キバはナルトやシカマルのように自分が誰と同じ班になるのまったく予想ができていなかったので、期待に胸を膨らませキバは満面の笑みで発表を待っていた。
 何班か発表され、まだ発表されていない者はドキドキしながら待っていた。
「第七班春野サクラ…うずまきナルトそれとうちはサスケ」
 ナルトは内心やっぱりと思いつつ、一応演技でショックを受けたふりをした。
 その後も何だかんだ文句を言うナルトを演じて、午後に担当上忍がくるまで解散した。
 解散した後、ナルトは影分身を残してシカマル達といつもの場所で落ち合わせた。
「ナルト、お前の班大変そうだな」
 ナルトがいつもの場所につくと、そこにはもうナルトを除いた全員がいた。
「全くだぜ…サスケは予想してたけど、サクラまでと……」
 まだ班行動をしていないというのに疲れきった顔をしているナルトを紅焔が励ます。
「まあ、俺にはどうにもできないが……お前の中で見守っているよ」
「そうだぜ〜。俺だってシノみたいな不気味な奴と一緒なんだからナルトも元気出せよ!」
 キバも疲れた顔でナルトの肩をたたいた。その時ナルトは呟いた。
「せめて担当上忍はまともな奴が良いよな…」
 それは小さな声だったが、確かに紅焔達には届いた。そして紅焔は何処となく黒い笑みを浮かべた。
「安心しろ、変な奴だったら俺が殺してやる」
 最後の一言に思いっきり殺気を込めて言う紅焔にナルトまでもが背筋に悪寒を走らせた。しかし、当の本人はすでに殺気を消し、いつもどおり笑っていた。
「ほれ、そろそろ行かないと担当上忍が自分の目で見れないぞ」
 紅焔はそう言ってナルトの中へ戻り、ナルト達を集合場所へ向かわせた。しかし、ナルトの中で五感を鋭く張り巡らし、ナルトの担当上忍を見極めようとしていた。

 そう、もしもナルトに危害を加えるようなら瞬殺できるように…。


第十一話