再不斬VSカカシ  さらされた目は赤く、黒く勾玉のような形をしたものが浮かんでいた。
 ナルトは勿論この目のことを知っていた。そして、サスケもこの目のことを知っていた。
 『写輪眼』
 今ではサスケ一人になってしまったうちは一族特有の瞳。体術、幻術、忍術を先読みする力があるといわれている瞳術の一つである。
「しかし、写輪眼のもつ能力はそれだけじゃない」
 サスケは未だ信じられないというような声色で呟いた。そう、写輪眼のもつ能力で恐れられているもの、それは他人の技を見極め、コピーしてしまう力であった。
 その能力をつかい、任務をこなしてきたカカシにつけられた名は『コピー忍者のカカシ』
 名誉なのか不名誉なのかいまいちわからない二つ名であったが、他国の者から恐れられているのは確かである。
 コピーといえど、千の忍術は恐ろしい。
「さてと……お話はこれぐらいにしとこーぜ」
 カカシと同じく、顔の下半分を隠している再不斬であったが、声色から表情がにやけているのは容易に想像できた。
 殺戮を楽しむ者の声。表情。
 素早く木の幹を蹴り、近くにあった池の水面に立つ。
 水面歩行はある程度の忍者ならば簡単にできることだが、その術を知らないサクラは驚きの声を上げる。
 その間にも再不斬はチャクラを練りこんだ。
「忍法……霧隠れの術」
 辺りが霧に包まれ、視界が悪くなる。
 さすがは無音殺人術の達人と呼ばれた男だとカカシは感心したが、ナルトからすれば無音には程遠かった。
 微かに感じる気配や風の動き。それだけでナルトは再不斬の位置を知ることができる。
 霧が濃くなっていく中、声がした。
「8か所。喉頭・脊柱・頸静脈・鎖骨下動脈・腎臓・心臓……」
 不気味な声が嗤うかのように言う。
「さて……どの急所がいい?」
 その気になれば8の急所の中の一つを気づく間もなく攻撃してやると言っているような言葉にサスケとサクラは怯えた。
 本当の恐怖はこれからだというのに、今から驚いてどうするんだと言いたげなナルトであったが、皆の手前、怯えたふりはしておく。
 刹那、殺気と殺気がぶつかり合う。
 肌は粟立ち、体が本格的に震え始めた。
 まともに殺気を感じたことのない者には耐え難い空気が流れる。このままでは小一時間もしない間に気が狂ってしまうであろう。
 命が目にみえない者に握られている感覚に、サスケは自決を覚悟した。
 が、自決の必要はなかった。
「安心しろ。お前達はオレが死んでも守ってやる」
 お前達の中にナルトは入っていない。ナルトはカカシよりも強い。
「オレの仲間は絶対殺させやしないよ」
 その表情はとても優しい笑顔であった。そして、オレの仲間という言葉の中にはナルトも入っている。
 再不斬から守る対象ではないが、ナルトは確かに仲間なのだ。
 言葉の意味を汲み取っているのか、ナルトは仄かに顔を赤くした。
「それはどうかな……?」
 おぞましい声と共にタズナとサスケ達の間に再不斬が現れた。
 ナルトを除いて、誰も再不斬が移動したことに気がつかなかった。
「終わりだ」
 巨大な首きり包丁を振り回そうとした再不斬の腹にカカシがクナイを突きたてた。
 だが、それは本体ではない。
「先生! 後ろ!」
 カカシの背後に見えた再不斬の姿にナルトが叫ぶ。今目の前にいるカカシが水分身だと知っているナルトからすれば、面倒なことこの上ないのだが、言わねば怪しまれる。
 背後にいた再不斬の首きり包丁によって、カカシの胴体は真っ二つに分けられる。
「キャーーーー!」
 まさかカカシが水分身の術を使っているとは知らないサクラが悲鳴を上げた。
「動くな」 
 本体は再不斬の後ろに周り、首にクナイをつきつけた。
「終わりだ」
 先の再不斬と同じ台詞を吐いたカカシだが、爪が甘かった。
『馬鹿! そいつも水分身だ!!』
 以心伝心の術でカカシに言うが、時すでに遅し。
 カカシがクナイをつきつけていた再不斬は水と化し、本物の再不斬がカカシの真後ろに立っていた。


十六話 対決