派手な登場のおかげで、誰もがナルトに注目した。ナルトとしては、自分に敵が注目している間に再不斬を倒して欲しかったのだが、カカシまでナルトに注目してしまった。
『このド阿呆がっ!! お前までこっち見んな!!』
 以心伝心の術でカカシを怒鳴りつけると、カカシはしまったという表情をし、再不斬に向きあった。だが、すでに再不斬はカカシの方へ神経を集中させている。
『……ごめんなさい』
『本当に馬鹿だな。馬鹿。
 オレはサスケの方に行くから、そっち片付けとけよ』
 そう言い残し、ナルトは氷の鏡が囲む檻へと自ら入って行った。
「このウスラトンカチ! お前までこっちにきてどうする?!」
 至極当然のことを言うサスケだが、ナルトからすればそれは相手の力量を見極められていないということに他ならない。下忍としての力では外からでも白の氷を壊せないのは見ればわかる。それならば、護衛対象への攻撃を少しでも軽減させるために、同じ檻の中へ入ることこそが正しいのだ。
「これは氷だ。ならば……」
 サスケの組む印をみて、火遁を使おうとしているのはすぐにわかったが、果たしてサスケの力で目の前にある氷を溶かせるのだろうか。ナルトは溶かせないと踏んで、影分身を用意した。
「そのような火力ではこの氷は溶かせませんよ」
 白のあざ笑うかのような言葉にサスケは悔しそうな表情を浮かべる。白に少しの隙ができたのを見て、ナルトは影分身達を使い、全ての氷を叩かせた。
 だが、白は目に止まらぬスピードで移動し、全ての攻撃をかわした。白のスピードは光りのスピードと言っても過言ではなく、ナルトの目を持ってしても確実に捕らえることはできなかった。
『あの術、使えたら便利だろーなぁ』
『さすがのナルトでも血継限界は無理だろ』
『妖力でも無理か?』
『無理だ』
 紅焔と話している間、ナルトの姿はまるで白の術に呆然としているように見えたのだろう。
「できるなら、君達を殺したくない」
 悲しそうな白の言葉がナルトの耳に届く。
「でも、君達が向かってくるのなら、ボクは心を殺して君達を殺す」
 邪魔をしないのならば殺さないという宣告に、ナルトは白がどれほど忍に向いていないかということを改めて認識する。そして、再不斬がそれほどまでに白にとって大きな光りなのかということも知る。
「ボクはあの人を守りたい。それが、ボクの夢」
 仮面の下はきっと悲しそうな表情をしているのだろう。それでも、ナルトはタズナやサスケを見殺しにすることはできない。戦うしかない。
「ナルト! サスケ君! 死なないで!」
 負けないでとは言えなかった。サクラは自分にはまだ人を殺めるだけの心がないということを知ってしまったから。だからせめて、死なないでいて欲しいと叫んだ。
「死なないで……。か? とんだ平和ボケだな」
 再不斬が嗤う。サクラは睨みつけることしかできない。平和ボケをしているということは否定できない真実だから。サクラが唇を噛み締め、それでもタズナの傍を離れずにいると、目の前で接近戦が始まった。
「カカシ。お前がオレに勝てたとしても、白には勝てねぇ。
 あいつはオレが育て上げた戦闘兵器だ。お前なんかに勝てるはずがねぇ」
 ニヤリと笑う再不斬に、カカシはナルトが負けるはずがないと言ってやりたかったが、それを言えば確実にナルトに殺されてしまうので、眉間に皺を寄せるだけにとどまった。


第二十七話