違和感
「ネジ、お前下忍になっても頑張れよ!」
ネジは普通なら去年卒業だが、日向の宗家がネジを七年制のアカデミーに入学させたために、他の者より一年早くアカデミーに入学したのだ。そしてその護衛のナルトも早めにアカデミーに入学したのだがナルトはまだ卒業できない。
「ああ……しかしナルト、お前また落ちたんだって?」
ネジがナルトに尋ねると、ナルトは仕方ないと言う風にため息をついた。
そう、ナルトはこれで二回試験に落ちているのだ。ネジとその他の子供たちがずれて入学したために起こった悲劇である。
「ああ…次の学年に名家の坊ちゃん嬢ちゃんがけっこういるからな……」
そうか…と表情は残念そうだが、内心ネジは喜んでいた。ネジはナルトを守りたいと思い、修行をつけてもらうことにしてから数日でそのことを後悔していた。
授業中でも油断すればクナイが飛んでくるし、何処に罠があるのか分からない。それに加えて放課後にチャクラを全て注ぎナルトと鬼ごっこ………。
そんな命がけの修行のおかげか、確かにネジは強くなった。今ではその辺の上忍と対等以上に渡り合えるだろう。
「ネジ……お前嬉しそうだなぁ?」
しかしまだまだナルトには勝てない。あっさり心のうちを読まれてしまってネジは早めにここを抜け出すことにした。
「じゃあな、俺はこの後任務があるから!!!」
ネジは素早くこの場を切り抜けた。
「ネジ……修行のとき覚えてろよ?」
ナルトは禍々しいチャクラを出しながら呟いた。
結局ネジの行動は、その場しのぎにしかならない。どうせ夕方頃からナルトの夜の任務までの間、一緒に修行をしているのだから。
三回目のアカデミー六年生。ナルトの学年には見事に名家がそろっていた。
くノ一以外は全音そろっていたため、今回の警護は楽そうだと考えていたナルトだったが、サスケの存在がそうはいかせなかった。
「サスケー!! 俺ってばおめえになんて負けねぇてばよ!!」
何か反応を返すかと思えば……。
「フン……」
鼻で笑って返しやがる。ネジ以上に会話しにくいサスケのことを表だけではなく、素でも嫌いになったナルトであった。
第一ネジは表面はクールだが、中身は世話焼きだし、一つ一つのリアクションがあるのだ。それがナルトがネジを気に入った理由の一つなのである。
嫌いな奴をいちいち見てるのも楽しくないので、ナルトはサスケをからかうことより、シカマルたちと悪戯をすることが多くなった。
「それにしてもシカマルとナルトって知り合いだったのかよ?」
キバが聞くと、シカマルはめんどくさそうに
「ああ、チョウジやいのもだぜ?」
と返す。キバは俺だけ知らねぇのかよとふてくされた。
「なーに言ってんだってばよ!! 今は仲間だろ?!」
ナルトがキバに飛びつきながら言うと、キバはほんのり顔を赤らめたが、ナルトが気づくかなかった。
「そっ…そうだよな!!」
キバが照れ隠しのように笑う。ナルトの「仲間」発言は嘘ではない本心からである。
実際サスケよりもキバのほうが気に入ってるし、キバの明るい性格は嫌いではなかった。
「そうだ!! 万年中忍の机にこれを入れるてっばよ!!」
ナルトが取り出したのは一枚の紙。
「何だ? それ」
見たこともないものに興味を示すシカマルに、ナルトはじいちゃんとこから持ってきたと言った。
実はこれ、小規模の起爆札で敵をかく乱させるときなどに使うものである。しかしこれもナルトが改造しており、机一つぐらいなら一瞬で燃え尽きる代物なのだ。
本来ならば悪戯ではすまない威力である。
「ふ〜んまあ小規模な起爆札だろ」
さすが天才のシカマル。見た目で小規模な起爆札と判断した。ナルトの改造を見分けることなど、上忍でも難しいので、シカマルが見分けられないのも無理はない。
三人は参謀であるシカマルの言うとおりに起爆札を設置した。より効率よく、よりスリリングになるように設置するには、シカマルの協力が必要不可欠なのである。
設置を終了した四人はイルカがじっと来るのを待った。
何も知らないイルカはいつものように机の引き出しを開ける。
その瞬間、酸が金属を溶かすような音が職員室に響いた。その音は白い炎がイルカの机を溶かしつくした音であった。
「なっ……」
さすがのイルカも冷汗を出さずにはいられない。あと少しでイルカ自身も燃え尽きるところだったのだ。
職員室中に金属の溶けた匂いが充満し、周りの教師は鼻を抑えている。
「やったてばよ!!」
ナルトが場違いな歓喜の声を上げると、イルカはすぐさまナルトに近寄り、ナルトの頭を殴った。
「ナ〜ル〜ト〜ォ?」
その表情は鬼。怒気に溢れた赤鬼であった。
「やべえ!!」
「あたりまえだ!」
「黙ってろよなぁ……」
「まぁナルトだからね」
そんな会話をしながら悪戯小僧達はあっという間に消えてしまった。
「あいつら!!!」
机の中には生徒達のテストや成績表が入っていたので、イルカは大きなため息をついた。ドロドロに溶けた机の中から成績表やらなにやらを取り出して再生させることは不可能。保護者からまた何を言われるのかわかったものではない。
そしてその放課後、しっかりイルカにつかまった悪戯小僧達は居残りを命じられた。
悪戯をした罰として教室の掃除を命じられた四人は掃除をしながらも喋っていた。
「しっかしナルト、お前アレはやばいぞ〜?」
さすがにあの火力では、イルカが死んでもおかしくはなかった。
あと少し、イルカのいる位置が違っていればイルカは机と同じ運命を辿ることになっていたであろう。
「俺もあんなに凄いとは思わなかったてばよ!!」
無邪気に笑うナルトだが、キバとシカマルはどこか不自然に感じた。
シカマルはナルトの動きや言い方で不自然を感じ取り、キバは百%感で感じ取った。
「……ナルト…お前なんか隠してるだろ?」
聞いたのはキバであった。
シカマルは、キバが自分と同じことを思っていることを知って驚いたようだが、すぐにナルトの方を向き返答を待った。
「……何も隠してないってばよ?」
言葉では否定しているが、表情は不適に笑い、否定を消し去っている。
「嘘だ。お前は……俺たちが知っているナルトよりも、ずっと凄い奴なんだろ?」
次はシカマルが問いかける。疑わしそうな目をナルトに向けている二人に、ナルトは言う。
「もしさ……俺が何かを隠してんなら……凄い奴だっていうなら…その証拠を見つけてみろってばよ?」
そう言うと、ナルトはその場から離れてしまった。
残された二人は協力を余儀なくされ、話しに入れなかったチョウジはただ黙々とお菓子をほおばっていた。
第八話 意外な真実