1:私達は知っている
〜サクラ〜
知ってるよ。
七班の皆は知ってる。
ナルト。あんたが強いって。
いつでも私達を守ってくれてて、そのたびに傷ついてる。
何も知らないふりして全てを知っているあんたは、いつでも傷ついてる。
知ってるんだから。
里の大人があんたにどんな仕打ちをしてるのか。
でも私達は知らないふりをしてる。
あんたが我慢してるんだから、私達も我慢するわ。
「見つけたってばよ!」
探すように依頼された指輪は、探し始めてから五時間以上経って、あんたが見つけた。
本当なら一分もしないうちに見つけられるのに、私達にあわせてくれてるあんたが愛しい。
「お前が見つけられるなんて……。運がよかったんだな」
わざわざ憎まれ口を叩く彼も、ナルトのことは知ってる。
ナルトに安心して欲しい。
私達は何も知らないから。あんたを拒絶する理由なんてないわ。
あんたはドベで、マヌケな下忍。
大丈夫。私達は知ってるけど、知らないふりしてるから。
〜サスケ〜
知らないと思ってるのはあいつだけだ。
全部知ってるって、あいつが知ったら……困ったような顔をするんだろうな。
怖がられるんじゃないかとか、嫌われるんじゃないかとか考えるに決まってる。
知ってるんだ……。
あの笑顔は偽りだって。
本当のあいつの笑顔はもっと寂しげで、泣きそうな笑顔だってことを。
我慢するなと叫びたい。許されるならあいつを傷つける全てを壊したい。
あいつが望むのならやってやるのに、あいつは望まない。
傷つけられても、偽りの姿を演じさせられても、誰も憎まない。何も壊さない。
「見つけたってばよ!」
偽りの笑顔で叫ぶあいつを見るのは辛い。
「お前が見つけられるなんて……。運がよかったんだな」
だけど、オレ達が全てを知ってると知ったあいつの表情を見るのはもっと辛い。
あいつが演じるならオレ達も演じてやる。
何も知らない無知な下忍を演じてやる。
里の醜さも、お前の傷も、全て知らないことにしておいてやる。
俺の弱さもお前の強さもないことにしてやる。
だから笑ってろ。
今はまだ、本当の笑顔じゃなくていいから。
とりあえず笑っててくれ。
〜カカシ〜
本当に何も知らないのはあの子だけなんだよね。
あの子自身は全てを知ってると思ってる。
里の醜さ、欺瞞、九尾の真実。
そうだね、何でも知ってるんだね。
でも、知らないでしょ?
先生達はナルトの正体を知ってるってこと。
本当は暗部だってことも、人を殺すことにためらいを覚えないことも、里の奴らがナルトにしてることも知ってるよ。
でも言わない。言えない。
だって、傷ついちゃうでしょ?
怖がならいよ。嫌わないよ。そんな言葉、信じてくれないでしょ?
今までも何度も聞いたその言葉。信じるたびに騙されたんだよね?
でもいつか言ってあげる。
今はまだ早いけど。いつかきっと言ってあげる。
大丈夫ってね。
「見つけたってばよ!」
元気だね?ここ三日間一睡もしてないはずなのに。
食事だってろくにしてないはずなのに。
ばれないように必死なその姿が健気だよ。
「お前が見つけられるなんて……。運がよかったんだな」
いつもの光景。
ドベと天才の喧嘩。そうだよ。何も知らない無知な下忍と、全てを知ってる暗部の喧嘩だなんて。
そんなの知らないよ。
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